折々の水木ファン−其之四−

この話は、ある水木ファンの折々の言動を描いています。
水木作品のファンの方でなくても読めますが、ファンの方にしかわからないネタだと思われます。


ではどうぞ。

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一台の自転車が走っている。

それはAの自転車だった。
何のことは無い。スーパーに買い物に行った帰りである。

家のすぐ近くまで戻ってきたAは、ふと思いついた。

その日の夜は、何の予定も無い。
ここで曲がればすぐに家に着くが、まっすぐ行けばレンタルビデオ屋がある。
娯楽の少ない町のことだ。
多分、この辺一帯の住民の大部分が会員であろうというビデオ屋である。
つまり当然のごとく、Aも会員だった。

A(心の声):(何か借りていこう。財布に会員証を入れっぱなしのはずだし…)

どうせ、急いで冷蔵庫に入れなきゃならんものを買ったわけでもない。
少しくらい遅れて帰っても良いだろう。
思いながら、Aはペダルをこいだ。

だが、目の前に店はあるのに、Aはしばし止まらざるを得なかった。

国鉄…もといJRの踏切である。

迫る夕闇の町で明るくライトアップされた店が目の前に。
しかし二車線分の矢印が無情にも光っている!

安全のための踏切が、非常に忌々しいものに見えてしまうという 自分勝手な心を抱き、
Aはじりじりしながら目の前の遮断機を見つめた。


遮断機の色は、 と 黄色。それが交互に棒を彩っている。

   ―――間―――

A:「………………これって…」

何かを言いかけ、Aは口を閉じた。


しかしビデオを借りて帰る間、明らかにAは何かを道に探していた。

それは、電であったり。工スであったり。



どこか満足に頷きながら、Aは住み慣れた町をキョロキョロしていたという。



わき見運転かよ、水木ファン?!

(了)


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