「妖怪とは何なのだろう? 本当にいるんだろうか?」
そう考えたことはありませんか?
目には見えないし、触ることも出来ない。
お化けや幽霊とも違うみたいだ。
水木しげるの漫画には沢山出てくるけれど、それって実際に起こったことじゃないし…。
本当にいるんだろうか? 人間や他の動物みたいに?
まさか!そんな事があるはずない!
だけど昔の人は絵に残してるし…むしろ存在していればとても面白いなと思うんだけどな。
しかし今は科学の時代。いないって事は明らかだ。むしろ、ンなことは考えるだけで馬鹿にされる。
……だったら、ただの空想でしかないのか?
…そもそも最初の疑問だよ。妖怪って何だ?
…………考えても「こういうモンだ」って説明が出来ないんだよね、これが。
誰かわかりやすく説明してくれないかなぁ…??
そんな時にこの文章。↓↓
これからのハナシは、水木サンが文部科学大臣に就任したときの挨拶文の草稿だと お考えください。 え〜、このたび、文部科学大臣を拝命いたしました水木しげるでございます。 水木サンの、もといワタクシの教育と科学に関する考えを、ご披露申し上げます。 見えないから存在しない、だから、そんなものは教える必要がない。 そういう考え方が、明治以降、日本の教育の根幹をなしてきました。江戸時代まで の迷信や非科学的な古い発想を捨て、文明開化の科学的な教育を子どもたちにしなけ ればならないと考えたわけですな。その教育観が、二十一世紀を迎えた今日まで営々 と続いております。それは一見、科学的に思える。 しかるにであります。それこそ非科学的な意見そのものなのだということを、いま ここで声高らかに申し上げたいのであります。 実は、科学とは、目に見えないことをカタチにする学問なのです。 科学は大きく分けて自然科学と人文科学に分類されますが、前者は自然界のなかで 「一定の法則」を導き出すことを目的とします。 たとえば、気象学では高気圧・低気圧などの数値を指標のひとつとして、気象にお ける一定の法則を導き出しています。 「関東地方は高気圧にすっぽりおおわれ、明日は快晴になるでしょう」 「日本海側は低気圧による前線の影響で雨模様になります」 「沖縄地方に台風が接近してきました」 といった気象情報を導き出す学問が気象学です。 ところで、皆さんは、高気圧や低気圧が見えますか? 台風を見たことがあります か? 見たことないはずです。荒れる海は海であり、強い風は風のことです。 テレビや新聞の気象情報図に載っている気圧や台風を示す等圧線などは、気象学者 が、気圧や台風と言った「目に見えないモノをカタチにした」結果であり、一般人で も理解できるようにしたものです。 気圧も台風も感じることはできます。 九州方面に低気圧の前線が張り出すと、おばあちゃんの神経痛がぶり返す。これは 低気圧を感じているのです。また、湘南の海岸で波乗りをしている若者が「いい波が 来た」と思ったとき、ああ台風が近づいてきたのだと感じることができます。 その「感じる」ことができる「目に見えないモノ」を「カタチにする」からこそ、 気象学は科学であり、自然科学のひとつなのです。 人文科学では、たとえば、経済学というのも科学です。 あなたは「経済」を見たことはありませんね。 そこで経済学者は、株式や金利や債権といった「目に見える」指標で、経済の一定 の法則を導き出し、皆さんに経済を伝えているのです。 さあ、もうおわかりでしょう。 明治以降、誤った科学思想のもとで実施されてきた日本の教育界に、真の意味での 「科学」をあらためて導入することが、ワタクシの教育改革の最大目標なのでありま す(拍手)。 目に見えないモノをカタチにする教育です。 具体的に申し上げます。 不肖ワタクシ、水木しげるが文部科学大臣になったということで、この世かあの世 といった小さなこだわりを捨て、いま私たちのまわりで感じている、 「目に見えないさまざまな不思議」 を研究する「不思議学」を学校教育のなかに採用することを、今年度からスタート させる所存であります(ザワザワザワザワ……)。 ご静粛にご静粛に、皆さん、お静かに願います。 さらに、ワタクシは「国立不思議大学」を新設し、そのなかで妖怪学部をつくり、 初代学長兼妖怪学部長に就任いたします(ヤジ、怒号などなど……)。その妖怪学部の なかで……おい、キミッ、なにするんだ、まだ就任挨拶は終わってい……なんだ? キミは文部科学事務次官じゃないか、私をどこへ連れ……。 (テステス、テステス、ただいまマイクの試験中であります……) |
●『生まれたときから「妖怪」だった』
(水木しげる著 2002年6月25日発行 轄u談社) "第三章 宇宙派か、常識派か?"より抜粋。
これ、わかりやすい! 非常にわかりやすい!!
心の中の積年のしこりが取れたようだよ! 播_(T∀T )
結論。妖怪は感覚として存在し、僕たちは妖怪と共に生きている。
「彼ら」に形を与えた先人も凄いが、それをここまでメジャーにした水木先生はやっぱり凄い。
素敵な「文化」を有難う御座います、大先生!!m(_ _)m