ベンガーナの王都は、いつ来ても活気がある。
俗に、『買い物するならベンガーナ』という言葉があるように、この街に来ればあらゆる物が揃うとされているのは、決して誇張ではないのだ。

ポップがマァムを最初にデパートに連れて行った時は、彼女は初めて見るエレベーターにいたく感動し、何度も乗りたがったものだ。だが、肝心の買い物はと言うと、張り切りすぎる恋人の性格と懐を慮ったのか、それとも本当に欲しいものがなかったのか―――理由はともかく、普段着よりも少し『よそ行き』な服を一着買ったにとどまった。
ポップは少々残念がったが、貯蓄は別に悪ではない。彼本人も特に買いたい物はなく、以降もこの若いカップルは―――デパート側にしては気の毒なことに―――立ち寄りはするが、目の保養を専らとしている。

もちろん、大戦の英雄として、それぞれ生国からの手当てをもらっている彼らは、贅沢をしようと思えば簡単だ。だが、規模は違えど村の質素な暮らしが身についた者同士である。大戦前と変わることのない暮らしを好み、派手な金の使い方をしたことは一度もなかった。

久々に2人連れ立ってベンガーナにやって来たポップとマァムは、今日はデパートには行かなかった。観光でやって来る人々のお目当てはそこだが、そうでなくとも店は多い。むしろ、日用雑貨を揃えるには市場を回った方が効率はいいのだ。



拍手御礼SS『策士』で削った文章。
ちなみにどうでもいいネタは、『買い物するならベンガーナ』の部分。
これには頭があり、『飯のロモスに薬の(or魔法の)パプニカ』が先につく。
他の国のバージョンもあって、たとえばテランなら『歴史知るならテランの都』、
カールなら『婿取りするならカールの騎士様』というふうに、各国のお国自慢を持ってくる。
語呂がいいので、ロモス・パプニカの位置は固定。強調したい国を3番目に持ってきて、〆。
つまりベンガーナの流通を自慢したいのなら、全文は、
『飯のロモスに魔法のパプニカ。買い物するならベンガーナ』というわけ。

…ほんとどうでもいいネタですね。