ダイの大冒険 おまけSSS
がんばって呪文描写の練習文!その1−メラ−
青年の指が静かに立てられた。その先に現れる小さな火の玉―――『メラ』だ。
そのイメージのしやすさから、全ての魔法使いが最も初めに覚えると言われる、初歩中の初歩の呪文。当然、威力は全攻撃呪文の内でも最も低い。直撃してもせいぜい服を焦がすくらいだ。
その程度の呪文で自分達を止められるわけがない、と彼は鼻で嗤った。いや…嗤おうとしたのだ。
けれど、皮膚感覚がその笑みを引きつらせた。
彼我の距離は10メートルほど。小さな火球1つに熱さを感じるはずがない。だというのに、ジリジリとしたこの熱気はどうしたことだ。
「まぁ、こんな場所だし…他に延焼する心配はねぇから、いいよな」
彼の緊張を他所に、青年は誰に取るでもない確認を軽い口調で独りごちた。
「喰らいな」
緩慢に見えたが、実際は一瞬の動作だったのだろう。
青年がまるで小石を弾くかのように指をわずかに動かした。
小さな火球は唸りを上げるわけでもなく飛び来たり、彼の横に立つ男のマントに当たる。
―――悲鳴はなかった。
彼が次に見たのは、人の形をした松明だった。
「あ…あぁあ…?!!!!」
一瞬にして炎に包まれた男が、己の置かれた状況をようやく知覚したようだった。だが、衣類だけが燃えているならともかく、すでに全身を包むように燃え盛る火からどうやって逃れられるだろう。
叫び声を上げて奇怪に踊り狂う仲間を助ける事も出来ず、彼は呆然と立ち尽くしていた。ある者は混乱の極みに入って右往左往し、ある者は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
「ったく…。人を襲うなら、反撃される覚悟くらいしとけっての」
溜息まじりの声が聞こえた。
いつの間にか、火柱の横に魔法使いの青年が立っていた。彼はその手で、死出の踊りを繰り広げる男の頭を押さえつける。
力を込めた風でもなかった。詠唱も聞こえなかった。ただ、まるで魔法のように(実際魔法なのだが)男を包んでいた火が消えていくのを彼は見た。
かくんと崩れ落ちた男は白目を剥いていたが、ボロボロになった衣服からのぞく皮膚は一切火傷を負っておらず、さっきまでの惨劇が嘘のようだ。
彼の目に宿る不審に気付いたのか、青年がにっと笑う。
「ヒャドと一緒にベホイミもサービスしといた。…殺しゃしねーよ」
(終)

WEB拍手でこっそり載せている呪文練習文です。
『いかにカッコよくポップの戦闘描写を文章で書くか』を頑張ってみる練習文。
サイトにUPを希望して下さった方もおられ、とても嬉しかったのですが、やはり練習文と言っている手前、堂々と残すのはアカンやろうという事で、こっそりUP。更新情報も書かないことにしました。
つーか、最初は撤去するって言ってたやん、自分。
とりあえず、最初は基本のメラで。
敵は盗賊です。ひょろっちく見える兄ちゃん=ポップを襲ったところ、強かに返り討ち(笑)
場所は荒地とか岩山です。超てきとー。
本編には一切繋がりません。
('08.12.03サイトに再掲)